経済価値の相対性理論

価格の変動と価値の変動

市場(しじょう)では、株価が上がったり下がったり、円やドルが上がったり下がったり、金地金が上昇したり、生鮮食品が上がったり下がったり、ありとあらゆるものが変動しています。人によって、上がってうれしいもの、下がってうれしいもの、様々でしょう。

でも、物の価値が上昇したり、下降したりすることは、どういう事なのでしょう。たとえば、株価が上昇するということは、どういう事でしょうか。もちろん株式の価値が上がるということですね。

ではこの場合、株式の価値は、何によって計られているのでしょうか。それはお金、通貨によってです。私たちは通貨によって物の価値を、またその変動を現しています。通貨の機能の一つは、ものの価値の尺度になるということですから。

ですがその物差しは、絶対的なものなのでしょうか。遠い昔、地球の周りを太陽が回っていると思われていました。今では誰もが太陽の周りを地球が回っていることを知っています。これは一つのたとえです。通貨が中心とも回っているとも言っているわけではありません。

しかし、わかりやすい例で、検討して見ましょう。たとえば同じ通貨の円とドルを考えて見ましょう。円がドルに対して値上がりしたり、値下がりしたりということは、ドルが円に対して値下がりしたり、値上がりしたりということですね。どちらが中心でもありません。

常に何に対して、どうなったかということです。(ですから、全資産を円建てとドル建てで、半々づつ持っているのなら、円、ドルの関係で言えば、どう相場が動いても同じということですね。)

そうはいっても、私たちは日本で円で生活しているので、ドルが上がっても下がっても、大して関係無いし、また、ドルを持っているのなら、結局は円に戻して使うのだから、円通貨を中心に考えるのが、自然ではないかですって? そうでしょうか。

ドルが値上がりすれば(円が値下がりすれば)、ドル建てで輸入されている商品は、またそれを使って生産されている商品は、円通貨に対して値上がりします。つまり、ドルに関連した商品の物価は上昇して、その商品に対して円通貨は、値下がりしていることになります。

ドルから離れても、すべての商品の物価の上昇は、やはり円通貨の価値の下降ですね。これをインフレーションと言いますね。逆の場合はデフレーションと言いますね。

では特別な事情で、キャベツが値上がりして、大根が値下がりした場合は、どうでしょうか。もちろんキャベツに対して、通貨は値下がりして、大根に対して通貨は、値上がりしたということですね。キャベツを中心に考えると、通貨はもちろん値下がりして、大根は大きく値下がりしたということです。

当然、ある銘柄の株価が上昇したということは、その株に対して通貨は値下がりしたという事です。一株100円の株価が200円になったということは、通貨を中心にすれば株価は高くなった訳ですし、その株式を中心に考えれば、100円が一株していたのが、0.5株相当になって通貨が安くなった訳ですから。

株価にしても金地金にしても外貨にしても、又はキャベツにしても、すべては跛行して動いています。絶対的なものはないのです。もちろん通貨(お金)が絶対的な価値の基準でもないのです。

たとえば通貨と株式だけに限定して考えても、資産全部を通貨(預金など)にしている時に、株価が上昇していった場合、通貨は株式に対して大幅に値下がりして、通貨は不良資産ということになってしまいます。また、逆は反対ですね。

投資の一側面

投資家の間では” 株を持つリスク、株を持たないリスク”と言われますが、これはこの事を現しています。ある資産を持つ事もリスクですが、持たない事も大きなリスクなのです。(この事はポートフォリオにも関係しますが、リスクの詳細については後で言及します。)

富のそれぞれの価値は、何に対してかの相対的なものです。通貨(現金)のみに執着し過ぎると、富(資産)を大きくすることや、資産価値を保つことは出来ないでしょう。私たちが常に比較価値が下降して行くものから、増大させて行くものに資産を移して行けるのならば、非常に効率的に富を増大させて行くことができるということです。

まあ、そのように理想的にシフトして行く事は、かなり難しい事ですが、ただ、大きな歴史の中で、常に価値が下降しているものに、資産の大部分を置く事は、避けなければなりません。(常に価値が下降していくもののもっとも有名なものは通貨(現金)です。最近の10数年間ぐらいはデフレ状況で現金の資産価値は増大しましたが、これからもそうであるかは、不明ですし、むしろ歴史的には特異な事態でした。)

各資産の価値は通貨も含め、相対的なものです。絶対的なものは何もないのです。太陽のように中心的なものは無く、常に何かに対して、変動しているのです。そのものが変動したのか、他のものが変動したのか、それは常に全体的に考えて想定するしか仕方がないのです。

その場合、表向きの金額は忘れる必要もあるでしょう。
例えば、100万円を預金して、20年たって110万円になっているとしたら、それは果たして増えているのでしょうか。その間、物価が1.5倍になり、平均株価が2倍になっていたとしたら、明らかに110万円では減少しているのです。
つまりこの場合、あなたは通貨に投資をして失敗したのです。

この事は投資の成果と見込みを考えるに、常に頭に入れて置かなければ成らないことです。

スポンサーリンク