文明と代償

見返りと差し出し

私達は自然を征服したのでしょうか。
そうではありません。
大自然は常にそこに超然として立ち、誰にも平伏すことはありません。平伏したのは人間です。

有史以前、私達は偉大な力、火を手に入れました。熱い力と暖かな明かりです。
反面、火傷の危険と火事の恐怖を背負込みました。そのコントロールを自然から加せられたのです。

電力も原子の力も同じでした。
病気からの開放、伝染病の恐怖から逃れる為に、薬物の希なる副作用のリスクも背負い込みました。

私達は常に自然に人身御供を差し出し、その見返りに豊かさを享受しています。
偉大なる自然との取引なのです。
愚か者は科学が自然のすべてを解き明かしたと錯覚しています。しかし、科学そのものが、自然との未然の多い契約書に過ぎません。

序章には明示されています。与えられた約束をもって、私達は豊かさを得る決断をしたのですと。

人身御供を、リスクを、必要経費を、利息を、私達は常に払いつづけることを宣誓していることを忘れてはならないのです。

ショーペンハウエルは、私達は死から人生を前借りしている、眠るのは利息を払うようなものだと言っています。
元々何も持たない人間はその一部を返す事で、安定を保つのです。
すべてを得ようと欲するのは、傲慢以外の何ものでも無いのかも知れません。

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